ルートダブル -Before Crime * After Days-

ゲームクリア&総括。

前半は割と面白かったのですが、後半で伏線の回収が始まると段々と微妙になっていきました。
期待した以上の面白さにはならなかったのが残念。
Ever17なんかとは比べるべくもなく。
シナリオ面で突っ込みたい部分があったことと、実質的な主人公である夏彦が酷すぎたのが主な原因です。
それでは、具体的に色々と書いてみたいと思います。


・エンディング直前の渡瀬説得時に関して
夏彦はQが全ての原因だと言っています。
9人の視点から導き出された「真実」をもって、反BC連盟=Qがテロリストであると断じています。
しかしながら、BCが怖いというのはBCが使えない人なら当たり前の感情であり、事件を起こした危険人物である(と当時言われていた)Aが自分の市に来たという事実を知って、抗議活動をすること自体は責められることではないと思います。
施設の中に無理矢理入って暴力を振るうなどしたのであればともかく、施設の外で活動してる分には問題は無いだろうと。
抗議活動を見てAが不安定になってあの事件が起きました、だからQが全部悪いですというのはあまりに乱暴。
そもそも、施設側はAが不安定になっているのを知っているのだから、Aを刺激しない場所で保護するなどの対策をすべきでしょう。
BCに反対する人がいるっていうのは十分予測可能だし、施設側の管理不足を指摘されないのはおかしい。

また、夏彦は9人の視点からQがテロリストであると断じていますが、これもおかしな話です。
9人の立場だけを見て「真実」というものが出てくるのでしょうか。
あの9人の中にQに深く関わる人物はいません。
渡瀬も宇喜多もQの一員ですが、Qの内部については殆ど知らないでしょうし。
9人の視点だけをもってQをテロリストと断じるとは、お前の世界はそんなに狭いのかと突っ込みたいですね。

・9人のうち3人が残らなければいけない場面について
誰かを犠牲にするなんて駄目だって言うのは簡単なのですが、具体的な考えもなく全員で生き残ろうと力説する困ったひこりん。
渡瀬ももっと止めてほしかったね。
レスキュー隊の時のあの完璧超人さはどこへ行った。
そんなに時間に余裕があるわけでもないのに、ギリギリまで全員で生き残る方法を考えるなんて賢い選択とは思えない。
最善を尽くすならまずは6人を生かす方法を考えるべきでしょう。
夏彦の子供じみた言葉をなぜ渡瀬が真に受けてしまったのか。
自分がテロを起こしたという負い目があったのかもしれませんが、きちんと反対しないのはいただけなかった。

・大人たちの責任について
渡瀬はきちんと罰せられていますが、同じQの一員である宇喜多や、コミュニケーターを幽閉して実験していた天川博士が特にお咎めがないのは何故なのか。
天川博士はラボのやり方に反対していて、悠里を逃がす算段などをしていたようですが、凪沙を実質的に殺すことに大きく荷担していたことは間違いありません。
彼女は彼女なりの理由があってやっていたのは分かりますが、罪は罪です。きちんと清算すべきでしょう。

・夏彦について
説教だけは一人前。
BC能力を活かして他人の記憶を書き換えたり、渡瀬を操縦したりできるよ!
渡瀬に対してなぜあんなに偉そうなのか。見ていて凄く不快でした。
確かに渡瀬に瀕死の重傷を負わされたり、ましろを傷つけられたりしたので、その点については渡瀬を非難できるでしょう。
ただ、それ以上でもそれ以下でもないはずなのに、渡瀬を便利な道具のように使っています。
渡瀬との約束を守らず記憶を消す気も満々だったり、渡瀬に「怪物」と言われても仕方がない。
そもそもテロがあると分かっていてラボに乗り込むのに、殆ど用意もしないで行くのは無計画すぎる。
若さ故と言ってしまえばそれまでですが、主人公なんだからもう少し考えて動いてほしかったですね。
悪意に汚染された風見を、大した策もなくアナウンスで呼んだこともあったし、もう少し頭使えと。
√Aではこいつのせいでかなり引っかき回されましたし。自分のことしか考えてないよこいつ。
幼少の頃の夏彦の声はかなり不快でした。わざとやってるのかと思うくらい。
悠里やましろがあんなに犠牲を払ってまで守る価値がある男だとはとても思えなかったですね。
渡瀬は努力に裏打ちされた立派な人間ですが、夏彦はただ自分の環境にあぐらをかいてるだけだし。
主人公を変えてもらえればもっと素直に作品を評価できた気がします。


・凪沙はなぜラボに幽閉されたのか
テレパシーくらいは使えたみたいですが、Lv5ではなかったはずだし、意味が分からない。
謎の少女の死体が本当に凪沙だった時は驚いたものですが、設定を無視した展開にすればそりゃ予想はできないですよ。

・Nに対しての不用心さについて
QのメンバーはAの事件を知っていたわけですが、凪沙を助ける時になぜもっと警戒しなかったのか。
研究者が怯えているのを見ても時間稼ぎだとしか思ってないし、悪意に汚染される危険性を考慮していないように見えました。
何年もかけて立てた計画の割には、根本的なところで杜撰と言わざるを得ないですね。

・シナリオ構造について
全体的に中だるみが多かったですね。
いくら違う視点とはいえ、同じ出来事を何度も見せられるのは流石に飽きます。
登場人物の過去について見るシーンも、1度や2度ならいいんですが、回数が多すぎて流石にだるい。
特に最後の9人で脱出方法を考えるシーンはひどかったですね。
あの切羽詰まった状況で、本編をスルーしたまま各登場人物の背景について延々と何十分も見続けていくのは流石にねえ。
例えるなら本を読んでて盛り上がっている最中に、強制的に何十ページもある注釈を読まされるような。
いいから早く本編に戻せよと何度思ったことか。
風見さんと渡瀬のやりとりだけは良かったですけど!
風見さんマジ乙女。って話が逸れた。

とまあ、不満点などはまだ探せばあるかもしれませんが、とりあえず思いついたのはこの辺りですね。
なお、TIPS等は殆ど見ていません。
もしかしたら上に書いた疑問点のいくつかはそれを読めば解決するかもしれません。
とはいえ、上に書いたのは割とシナリオの根本に関わるところですし、もしTIPSで触れられているなら本編でちゃんと説明しろよって思いますがね。
TIPSも多すぎて、序盤しかちゃんと見てないんだよなあ。

文句ばかり書いてしまいましたが、プレイしてる最中は2,3時間ほどぶっ続けでやるくらいには面白かったです。
後半はもうちょっと頑張ってほしかったですけど。
プレイ時間は19時間31分。結構長かったですね。
点数は・・・80点で。
決して悪くはないんだけど、期待したほどでもなかったです。