さよならを教えて〜comment te dire adieu〜

総括。
最狂、最悪、最期の鬱ゲーと言われるこの作品。
そして実際のところ、鬱だわグロだわ主人公は狂っとるわでもう大変。
人間失格」の鬱を更に濃くしてグロ追加、主人公をもっともっと狂わせて救いを無くした感じの作品ですね。
どのシナリオを選んでも本当に救われない話です。
だけど私は、この救われなさがむしろ救いになるのではないかなと思っています。
最後でもしあっさりと主人公が立ち直ってしまったら、見ているこっちとしては置いていかれた感じになります。
主人公が救われても、見ている私が救われないというか。
最後まで救われなかった主人公を見て、この世に奇跡もご都合主義もないんだな、ダメなものはダメなんだと改めて納得することができました。
そういう意味では、私も主人公と同じです。
自分より弱い、画面の中の主人公がどんどんダメになっていく様子を、共感しながらも安心して見ていた。
自分と同じで、だけど自分より弱い彼を見ていることで、自分を肯定しようとしているのかもしれません。
という感じに、この作品をプレイすることで改めて自分というものを考えさせられました。
このゲームの本質は鬱でもグロでも狂気でもなく、理想と現実のギャップをどう埋めていくか、人とは違う、弱い自分をどう肯定していくか、それがテーマになっているのだと思います。

結局、彼は負けちゃったんだ、現実に・・・・妄想にも

彼は自分を肯定することも出来ず、かといって現実を受け入れることもできずに苦しい妄想の中に埋もれていくことになりました。
この話自体に救いは無いです。
だけど、これを見た私には、まだきっと救いがあるはず。
彼のようになることもできるし、別の道を探すこともできる。
彼の失敗を教訓に、生きていければいいなと思います。
とまあ、これで終わればちょっとかっこいい感じの感想なのですが(何)
エロゲということで、いつもの評価とか補足で書きたいこともあるのでつらつらと。
シナリオ評価に関しては睦月とそれ以外という感じで分けられますが、それでも殆ど同じでほぼ全部一緒と言えます。
というわけで、評価を分ける必要もないかなと。
敢えて言うならエンディングの描写が少し多めだった睦月シナリオくらいで。
キャラの評価に関して。
これもまあ、あの世界のヒロインは多分全員主人公の投影に過ぎないと思うので、全員一緒だよなぁと。
敢えて言うならおにーちゃんと呼んでくれたまひるでしょうか。
まあ正直、主人公の分身であるヒロインたちは全員気持ち悪いんですが(爆)
的確にこちらの心を突くような台詞を言ってくれますしね。
一番の萌えキャラは主人公ですw
攻略対象ではないけどとなえさんは良かったね。
マリオの話は興味深く、そして怖かった。
キノコを食べると大きくなるという幻覚。
自分以外の動くものは全て敵。
お姫様なんて本当にいるのかね?
瀬美奈さんは、可哀想な人だけどどうにも好きにはなれなかったな。
こんな感じかな。
あと、古いゲームなのは分かりますがログが読めないのは勘弁して欲しかった。
これが一番きつかった。既読スキップがあったからまだ何とかプレイできたけど。
それ以外はまあ、概ね目を瞑れるレベルだったかな。
01年の作品でボイス有って結構凄いのではないかと。
OPは無かったけど、エンディングでは「さよならを教えて」が流れました。
I'veファンなら既に知ってる方も多いのではないでしょうか。
私も曲だけなら随分前から知っていて、歌詞を聴いてどんなやばいゲームなんだろうと思っていましたw
絵も古い感じだけど、このゲームの雰囲気には合っていたのでむしろプラス評価です。
いくら絵が良くても有葉さんとかleafの絵が出てこられたら正直雰囲気ぶち壊しなのです。
ではまあ、最後に総評。
シナリオが一本道、ログが読めないなどの問題点はありましたが、とにかくテキストが秀逸でした。
最後の最後まで気持ち悪い雰囲気のまま突っ走ってくれたことも好感が持てます。
というわけで、80点。75点にしようか迷ったけど、テキストのレベルの高さでカバーです。
最後に。
相当毒が強いというのを期待してこのゲームをやってみたのですが、鬱にもならず特にダメージが無かったのがショックというか残念でした。
もうこのくらいの作品でも心を動かされないほど、心が壊れているのか。
私ももう、とっくに救われないレベルに到達しているのかもしれません。
まだ引き返せると思うんだけどなぁ。